総コレステロールが高いと言われた場合は、まずLDLコレステロールが高いかどうかを確かめます。LDLコレステロールが高くなく、HDLコレステロールだけが高い場合には[HDLコレステロールが高いと言われたら?]を参照して下さい。LDLコレステロールが高ければ、正常な人よりも動脈硬化性疾患のリスクが高いことになります。ただし、リスク因子はLDLコレステロールだけではないため、個々のリスクは併存疾患や年齢、喫煙の有無などを総合して判断します。
リスクが高い人では、LDLコレステロールをより低い目標値にコントロールすることで、動脈硬化性疾患の発症予防につながることが明らかになっています。既に狭心症や心筋梗塞をもっている人は特に高リスクであり、糖尿病や高血圧、慢性腎臓病などの疾患や、喫煙もリスクを高めます。こうした人ではLDLコレステロールを特に低く保つ必要があります。
逆に、リスクの低い人ではLDLコレステロールが多少高くても薬物療法を必要としないことが多いです。食事療法として、飽和脂肪酸を多く含む肉の脂身、内臓やコレステロールの摂取を控え、食物繊維や植物ステロールを含む野菜や海藻類の摂取を心がけることが有効です。効果が十分でない場合には薬物療法を併用します。薬物によりLDLコレステロールを下げることで、動脈硬化性疾患の発症や再発を減らせることが証明されています。
トリグリセライドが高いことは、動脈硬化性疾患の発症リスクを高めることが知られています。また、著明(空腹で500mg/dL以上)な高値は急性膵炎のリスクでもあります。トリグリセライドは食事・運動療法により大きな低下が期待できます。
食事療法では炭水化物摂取比率とアルコール摂取を減らすことが有効であり、糖質を含む菓子や飲料、果物などとアルコールの摂取を減らします。
著明な高トリグリセライド血症では脂質摂取制限が必要です。有酸素運動を中心とした運動療法も有効です。食事・運動療法では改善が不十分であれば、薬物療法の追加が必要なこともあります。
HDLコレステロールが低い人は、動脈硬化性疾患の発症リスクが高いことが知られています。HDLコレステロールはトリグリセライドの上昇に伴って低下していることが多く、トリグリセライドが高値の場合[トリグリセライド(TG、中性脂肪)が高いと言われたら?]で述べるような食事・運動療法が有効です。特に運動療法はHDLコレステロールを上昇させる効果があるため、ウォーキングやベンチステップ運動など中強度の有酸素運動を中心とした運動療法を1日30分、週3回以上を目標に行います。
トリグリセライドを低下させる薬物や、LDLコレステロールを低下させる薬剤には、HDLコレステロールを上昇させる作用がある薬剤もあります。
HDLコレステロールが低いことは動脈硬化性疾患のリスクを高めますが、HDLコレステロールが正常より高い場合にリスクが下がるとは限らないようです。日本人でHDLコレステロールが高い人の多くがCETP欠損という体質によるものと考えられており、動脈硬化性疾患のリスクが低いということではなさそうです。HDLコレステロールが高くても、生活習慣や薬物療法で正常に低下させることはできず、その必要もありません。
しかし、LDLコレステロールやトリグリセライドが高値である場合に、HDLコレステロールが高ければ動脈硬化性疾患発症のリスクをキャンセルできると考えるのは間違いです。LDLコレステロールが高い場合やトリグリセライドが高い場合には、HDLコレステロールが正常の人と同じように対処する必要があります。
高血圧は、血圧の値が高い血圧(収縮期血圧)もしくは低い血圧(拡張期血圧)のどちらか一方、もしくは両方が140/90mmHg(家庭血圧値では135/85mmHg)以上になる病気です。
高血圧は、サイレントキラーとも呼ばれ、自覚症状がほとんどない病気です。高血圧を放置していると、心臓病、脳卒中、腎臓病などの病気になりやすくなります。日本人の高血圧の約90%は原因がはっきりしない本態性高血圧で、遺伝や食塩の過剰摂取、肥満など様々な要因が組み合わさって起こります。
血圧は、診察室血圧と家庭血圧にて評価し、座位で測定します。家庭血圧は、朝(起床後1 時間以内、排尿後、食前)と夜(就寝前)の1日2 回測定します。朝・晩とも血圧は2回測って、その平均の血圧値をとります。測定した血圧値は血圧手帳などに記録しておくことを勧めます。塩分制限などの食生活を改善しても、家庭血圧の平均値が135/85mmHg以上なら、内科の受診をお勧めいたします。
高血圧の治療は心臓病、脳卒中、腎臓病の予防のために行います。治療は、140/90mmHg未満(家庭血圧値では135/85mmHg未満)を目標としますが、糖尿病や腎臓病などがある方はさらに低い血圧値が目標となります。高血圧が見つかったら、できるだけ早めに治療しましょう。
血糖値が150~180mg/dL以上になると尿糖が出てきます。血糖が高い・尿糖があると指摘された場合、糖尿病が疑われます。
早朝空腹時の血糖値が126mg/dL以上、食後血糖値200mg/dL以上、HbA1c6.5%以上の時、糖尿病が疑われます。
糖尿病になると、『尿量が多い』『のどが渇く』『体重減少』などの症状が認められますが、ほとんどの場合、自覚症状がない病気で、血糖が高い期間が長く続けば続くほど、徐々に進行して突然合併症を起こしてくる病気です。
糖尿病の合併症には、網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞や脳卒中などがあります。実際に糖尿病が原因で、年間約3000人が失明(網膜症)し、年間約1万4000人が腎不全になり人工透析療法を余儀なくされています。また、糖尿病のある人は、糖尿病のない同じ年齢の人と比べて、男女とも心筋梗塞や脳梗塞の病気を発症する割合が高くなると言われています。このような合併症を起こすことにより、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)の著しい低下を引き起こし、健康寿命が短くなります。
しかしながら、糖尿病になっても、適正な治療により血糖を管理することにより、合併症の発症・進展を抑制できます。そのためには、早期発見、早期治療が重要です。
心電図検査は、心臓の病気を早期発見するのに重要な検査です。心電図検査では、不整脈や心筋虚血など病気を見つけることができます。しかし、心電図で異常を指摘されたからと言って、必ずしも病気とは限りません。
不整脈には心配のない不整脈と、治療を要する不整脈があります。治療を要する不整脈として、心房細動があります。心房細動では心房に血栓ができやすくなり、心房に付着した血栓が剥がれて、脳血管に飛んで脳血管を閉塞し脳梗塞を起こします。また、心臓を栄養する血管である冠動脈が動脈硬化などで狭窄すると心臓に十分な血液が行き渡らなくなり心筋虚血となります。心筋虚血になると、ST低下・上昇、ST-T異常、異常Q波、陰性T波などの心電図所見が認められます。
しかしながら、健康診断の心電図検査だけでは、心臓の病気を診断することができません。負荷心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査、心臓カテーテル、冠状動脈造影などの検査が必要に応じて行われ、病歴や身体的所見や他の検査結果から、総合的に判断されて心臓の病気を診断します。
大切なのは、健康診断の心電図所見で、『要精査』『要治療』と指摘されたら、早めに循環器内科を受診しましょう。