本学会では、第20回国際動脈硬化学会(ISA2024)で発表される若手会員にトラベルグラントを提供いたしました。このプログラムは、動脈硬化学の臨床・研究を目指す次世代の人材育成を図ることを目的としています。
受賞された会員と演題は下記の通りです。(五十音順)
氏名 | 所属 | 演題 |
有屋田健一 先生 | 筑波大学人間総合科学学術院 | Risk factors for intracerebral hemorrhage by bleeding site |
尾松卓 先生 | 大阪大学 循環器内科学 | Serum-desmosterol may be a biomarker of intra-hepatic inflammation in MASLD |
川原卓郎 先生 | 九州大学 循環器内科 | Risk Stratification of Post PCI Patients by Japanese Clinical Guidelines |
鈴木崇史 先生 | 帝京大学医学部附属病院 | Genetic and biochemical analysis of four Japanese severe hypertriglyceridemia |
土井貴仁 先生 | コペンハーゲン大学病院 ヘアレウ・ゲントフテ |
Oxidants, antioxidants, and atherosclerotic cardiovascular disease |
馬渕卓 先生 | 東京科学大学総合診療科 | sLOX-1/LAB Ratio: Possible Biomarker for Liver Fibrosis in ACA-Positive Patients |
初の国際学会発表となったISA 2024 Omanについて報告する。
学会初日の早朝にマスカットに到着し、メイン会場で中東における動脈硬化関連疾患の現状について学んだ。ポスター発表は電子ポスターを用い、持ち時間内に質疑応答を行う形式だった。実際の持ち時間はルーズで国際学会特有の雰囲気を体感したが、幸い長時間にわたるディスカッションが可能となり、発表テーマである脳出血の部位別危険因子に関して多角的な質問を受け、有意義な議論を交わすことができた。現地研究者からはコホート研究の運営方法についての質問が多く寄せられ、各国の研究環境の違いを知る貴重な機会となった。
2日目以降は関心のあるテーマの発表を聴講し、多くを学んだ。さらに、日本人研究者との交流や現地文化の体験も大きな成果だった。
渡航支援に対し、改めて深く感謝する。
筑波大学
有屋田健一
日本から約13時間のフライトを経て、私はオマーンの地に到着しました。街全体が砂漠色で包まれ、その独特の美しさに圧倒されながら会場へと向かいました。
今回ISA 2024に参加させて頂いたことで、多くの学びを得ることができました。Welcome Remarks後のセッションでPeter Libby先生より改めて動脈硬化の進展には炎症が深く関与していることが強調され、また近年注目されているクローン性造血が慢性炎症としての心血管疾患の病態解明につながる可能性についても触れられていたのが印象的でした。私自身はポスターセッションでMASLD患者において血清のデスモステロール値と肝臓の炎症の程度が相関することを報告しました。格式ばったものではなく自由に発表も質問もできる形式でした。
クリスマスソングが流れ、タクシーはアプリで完結できるなど想像していた中東の国とは少し異なり驚くこともありましたが、一報で朝や夕にはモスクの礼拝の音が街中に響き渡るなど伝統的な雰囲気を経験することもできました。今回のトラベルグラントによる支援に、改めて感謝申し上げます。
大阪大学循環器内科学
尾松卓
2024年12月4日から6日まで、中東オマーンで開催された国際動脈硬化学会に参加する機会を得ました。私にとって初めての国際学会であり、さらに中東の地に足を踏み入れるのも初めてのことだったため非常に新鮮な体験となりました。
学会会場では、研究者や医師たちが活発な議論を交わし、それぞれの知見を惜しみなく共有していました。家族性高コレステロール血症やLP(a)、PCSK9を標的とした抗体薬・siRNA薬、さらに残余リスクとしての中性脂肪へのアプローチなど、昨今話題となっているような興味深い演題が数多く設けられていました。
私は日本の動脈硬化性疾患予防ガイドラインに基づく、特に二次予防に焦点を当てた臨床研究についてポスター発表を行いましたが、多くの参加者から興味深い質問をいただき、意見を交わす中で、知識の広がりとともに自分の研究への新たな視点を得られたように感じます。また、議論を通じて今後の研究の発展や診療における課題についても貴重な気づきを得ることができ、この三日間は非常に意義深いものとなりました。
学会参加だけでなく、オマーンという国の魅力にも心を奪われました。滞在日数こそ短かったものの、雨季を終えた12月のオマーンは広大な山々と青空に囲まれた静かな風景が広がっており、忙しさを忘れるひとときも味わうことができました。
九州大学循環器内科
川原卓郎
2024年12月4日(水)から6日(金)まで中東オマーン国首都マスカット市のOman Convention & Exhibition Centreで開催された「国際動脈硬化シンポジウム2024(ISA 2024、国際動脈硬化学会主催)」で発表する機会をいただきました。本シンポジウムでは動脈硬化に関する最新の臨床試験の結果報告や、将来臨床応用が期待される新たな治療薬に関連するセッションがあり、アラブのホスピタリティーを感じる温かな雰囲気の中、4つの講演会場では世界をリードする研究者の講演を拝聴することができ大変勉強になりました。
私は、留学先で行っている「酸化・抗酸化と動脈硬化性疾患の関連」のポスター発表を行いました。発表では多くの方から貴重な意見をいただくことができ、非常に有意義な経験が得られました。先生方からいただいた意見やアドバイスを今後の研究に活かしていきたいと考えております。
末筆ながら本シンポジウム参加のため、日本動脈硬化学会のトラベルグラントをいただき誠にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
コペンハーゲン大学病院
土井貴仁
【20th International Symposium on Atherosclerosis 2024 (ISA2024)】
会期;2024年12月4日(水)~6日(金)
会場:Oman Convention & Exhibition Centre
マスカット、オマーン
Webサイト:https://isa2024oman.org/
演題応募締切:2024年5月30日(木)
Late-breaking abstract submission 締切:2024年6月14日(金)
演題応募サイト:https://isa2024oman.org/abstracts/
【トラベルグラント概要】
応募締切:2024年6月14日(金)
応募資格:
① 演題発表時に満43歳未満の日本動脈硬化学会会員
② 演題登録時に日本動脈硬化学会会員歴が2年以上あること
③ ISA2024で演題が採択されていること。採択されなかった場合は速やかに日本動脈硬化学会事務局に申し出て応募を取り下げる。
④ ISA2024で筆頭演者として発表を行うこと。
【トラベルグラントの内容】
最大10名にグラントが提供されます。
グラント金額:1人15万円
グラントは、旅行費用、滞在費用などに利用することができます。
【応募方法】
下記の書類をメール添付で日本動脈硬化学会事務局にお送り下さい。
① トラベルグラント申請書(申請書Wordファイルダウンロード)
② ISA2024応募演題の抄録のコピー
③ 年齢を証明する書類のコピー
提出先:jas@j-athero.or.jp
【選考プロセス】
応募期間終了後、日本動脈硬化学会国際委員会が応募書類を審査し、選考を行います。
選考結果は2024年7月19日(金)までに個別に連絡いたします。
ご応募をお待ちしております。この機会に、皆様の研究成果発表のために、トラベルグラントをご利用ください。
日本動脈硬化学会 国際委員会
<本件に関する問い合わせ>
日本動脈硬化学会事務局
jas@j-athero.or.jp
(担当:大林)